いつものように相馬の湯口の方から、久渡寺山の裏側まで進める分。この林道は湯口林道というのかな。車を止めての主な観察ポイントは、沼、橋付近の沢、開けた草地、林の中の四か所。 沼付近では、水辺の草が茫々と茂り、沼は小さくなっていたが、ルリイトトンボがいくつか飛んでいてほっとする。番は見られなかった。緑っぽいトンボが一匹、縄張りを張ってかメスを探ってか飛びまわっており、撮影は端から諦めていたら、何と、幸運にも近くに止まってくれた。エゾトンボの仲間だった。  エゾトンボ（蝦夷蜻蛉） 前後翅の中脈前枝と次の径脈がその末端部で接近していなく、肛角部がやや尖っている。まずは九州のミナミトンボではない。後翅の肘脈室に横脈が４本あり、１ないし２本のカラカネトンボではない。むしろ似ているのはタカネトンボ。 エゾトンボはきれいな水質環境の湿地などに生育する、という点が多少ひっかかる。もしかして、エゾトンボの仲間では最も普通に見られるタカネトンボ（高嶺蜻蛉）の方かな？ どちらかは上付属器で区別するというが、写真では拡大しても明瞭ではなく、何となくエゾの方かなと。結局、概略的に蝦夷蜻蛉としておこう。 池沼が主なタカネトンボは、ヤンマのように、あまり止まることなく飛び続けていることが多い。成熟した雄は縄張りを持ち、時折ホバリングをしながら水域の周囲を旋回するという。 もうひとつ似た種として、エゾトンボ属として最も大きいハネビロエゾトンボ（環境省レッドリストの絶滅危惧U類）。流水性種だからますは違うだろうと...   橋の付近と沢では、クサレダマやオカトラノオ、クサギと華やかだった。橋の下など沢に下りてみると、真っ赤な実の、たぶんケナシヤブデマリ、ミヤマカワトンボに立派なイトトンボ。この日はこの場所に時間を多く費やす。 クサレダマ（草蓮玉） マメ科の木レダマ（蓮玉）に似たという意味だが、あまり似ていないという。葉は対生または輪生。三輪が印象深い。花の色から別名イオウソウ（硫黄草）だが、なかなか綺麗な花である。   クサギ（臭木） 枝や葉をちぎると強い臭気があるというが、一度も嗅いだことがない。これから花が突き出るところだが、これ（鄂？）だけでも綺麗。花が咲く前から実まで楽しめる木である。  ケナシヤブデマリ（毛無藪手毬） 別名ヒロハヤブデマリ。ヤブデマリが本州太平洋側・四国・九州なのに対し東北〜北陸の日本海側。葉の裏や花序に毛が少ない。花序に柄がある。果実は完全に熟すと黒くなる。 似ているムシカリ（オオカメノキ）の方は、葉の基部がハート形で、花序に柄がない。また、装飾花のないガマズミは、葉が倒卵形で葉の先が尖る。他に似たものにヒロハゴマギもあり、葉が長楕円形とはいいながら、現場では区別がなかなか難しい。  ミヤマカワトンボ（深山川蜻蛉） カップルかなと思って別に撮ったら、白い斑点が輝く雌二匹だった。  大きく元気なイトトンボを川中から200ミリ望遠でキャッチするも、ピントが合わず。残念！アオイトトンボ風だがほんとに堂々として飛んでいた。  開けた草地では、オカトラノオがたくさん咲き、数匹のオオウラギンスジヒョウモンが飛びまわっていた。そんな中、一本だけトモエソウが立派に咲いており、感激！ トモエソウ（巴草） オトギリソウ属。葉は対生で披針形、基部はやや茎を抱く。雄しべは多数で５束。花柱は５個という。茎が４稜形か、未確認。一日花なんですね。もったいない。オトギリソウは雄しべが３束、花柱３個。 最初に出会ったのは穂高縦走への最初の山小屋付近であった。その時は、巴形に随分と驚いたものだった。写真も撮っているが。   その他、道端あるいはちょっと入ってクルマユリ、オオウラギンスジヒョウモン、上手く撮れなかったキアゲハ、オオバクロモジの実。 クルマユリ（車百合） 輪生葉と、オレンジ色と濃紅色の斑点もいいが、花弁の先が強く反り返るのが何ともいいがたい。クルマユリだけ撮ってきたが、今度は葉が異なるコオニユリ（小鬼百合）にも注意しよう。序でに白いヤマユリ（山百合）にも。  オオウラギンスジヒョウモン（大裏銀筋豹紋 ） 前翅先端がより突出。前翅裏の先端が暗褐色。この写真では明瞭ではないが、ウラギンスジと比較し後翅裏外縁部の褐色に緑がかる。また、前翅裏に白斑がない。    キアゲハ（黄揚羽） 前翅基部が、ナミアゲハのような筋ではなく、黒斑の三角形。  オオバクロモジ（大葉黒文字） 葉が大きいオオバクロモジは日本海側に自生し、本県はこれに該当。狭義のクロモジは太平洋側から四国地方。 樹皮は灰褐色でまめらか、まるい皮目。枝に皮目はなく黒い斑点。葉は卵状楕円形、先端は鋭く、基部はくさび形。全縁。裏面は初めの頃は白っぽい。実は秋に黒く熟す。  さらに、オカトラノオのセセリ、葉っぱに映る蝶の影、ヨツバヒヨドリの昆虫、もうヌスビトハギが...     |