１． ソフィストたち―思考と価値の倒逆
（１）初期ソフィストたち
（２）後期ソフィストたち
２． ソクラテスとその学派―知識と価値
（１）ソクラテス―ソフィストの学の克服者
（２）小ソクラテス学派
メガラ、エリス・エレトリア、キュニコス、キュレネ学派
３． アッティカ哲学の最盛期
（１）プラトンと古アカデミア学派
（２）アリストテレスと古ペリパトス学派
１． ソフィストたち―思考と価値の倒逆
時代背景
１．ペルシア戦争（B.C.492-B.C.449）
ペリクレス時代（B.C.443-B.C.429）
ペロポネソス戦争（B.C.431-B.C.404）
→民主政治・ポリス・文化の衰退。個人主義的傾向・世界市民主義…４Ｃ
２．アイスキュロス（B.C.525-B.C.456）
ペリクレスが世話役、ソロンの直系の後継者。
ソフォクレス（B.C.496c-B.C.406）
アイスキュロスの３部形式を捨てる。神は副原因。
エウリピデス（B.C.485c-B.C.406c）
プロタゴラス、アナクサゴラス、ソクラテスの影響。
アリストファネス（B.C.445c-B.C.385c）
７賢人…ギリシアにおける新文化興隆期（B.C.７ｃ-B.C.６ｃ）
クレオブロス、ペリアンドロス、ピッタコス、ビアス、タレス、
ケイロン、ソロン （他にキロンの説もあり） ラコニア式短言法で。
（１）初期のソフィストたち…対象を自然から人間へ転換
徳の教師、職業教師。弁論術の重視。民主主義に対応しており、富裕な良家の子弟に歓迎され財を築いた者が多かった。内容は伝統的な徳目が多く真面目な反省に欠けていた。真実よりも説得の重視。多義性、不正な推理、相対主義。
プロタゴラス（B.C.500-B.C.430c）
エーゲ海北岸トラキアのアブデラ出身。アテネで４０年間ソフィストとして活躍。最初のソフィスト。莫大な財をなす。南イタリアに新しく建設された都市トゥーリオイの憲法起草の任にあたる。神々についての著作で涜神者として告訴され、アテネを追放された。デモクリトスの弟子。＜あるものはある。ないものはない。＞という絶対真理を前提するエリア学派や万物の尺度を自然とする自然科学的な考えに真っ正面から反対する。晩年はシシリ島で名声を得るが、逃亡の途中で死に面したともいわれる。
『法律』『打討論』『大論議』。相対主義…普遍的でかつ客観的真理は存在しない。「人間は万物の尺度である」、事物はどのようにも眺められる。主体が自分を述べるのみ。個人主義…個人としての主体。「私は神々について、彼らがあるともないとも、知る可能性を持たない。」
ゴルギアス（B.C.483c-B.C.376）
シシリー島東部レオンティノイ出身。B.C.427 故郷の町がシュラクサイと争った時、外交使節代表としてアテネに依頼しそれを達成。エンペドクレスの弟子。エンペドクレスとエレアのゼノンの影響が大きい。故国に政変があった時、ギリシアの北部テッサリアに逃亡、以後ソフィストとして活躍。ギリシアの和平統一を念願した政論家でもあった。彼の思想は弟子ソクラテスによって継承された。
『自然について、または存在しないものについて』鮮明な懐疑論…真理はない３つの命題
1)なにものも存在しない 2)存在してもそれを知ることはできない 3)知っても他
人に伝えることはできない。
プロディコス（エリスの、不明）
デモクリトスなどと同時代人。キオス島出身。外交使節としてアテナイへ。ソクラテスも彼の講義を聴き学生であった。厳格な文法家。言葉の正確な使用法、類義語や同義語の微妙な区別。自然研究も行った。神話の合理的解釈の先駆（人間の有用なものが神とされた）→のちのエウヘメロス説。説話＜青年ヘラクレス＞→『年齢論』
ヒッピアス（エリスの）
ペロポネソス半島北西部エリス出身。プロディコスより若い。ソクラテスとほぼ同世代。外交使節としてしばしばスパルタへ。ギリシア各地を遍歴。博学者、世界旅行者。多才多芸、数学・天文学・音楽・文法なども。優れた記憶力。自らの衣服や所持品は自ら作ったもの。万人は平等。書かれざる法則≒自然法。
強者の権力思想や道徳的ニヒリズムと露骨な実利主義が混合した危険思想が表面化した。その社会的背景に、ペロポネソス戦争の敗北と再三の政変、風俗の悪化、宗教や道徳の無力化などがあげられる。
アンティフォン（アンティポン B.C.５世紀後半）
恐らくアテナイ人。エレア学派の影響。自然法と人為法を区別。国法は人為法であり、人の前で守られればよいが、自然法はどんな場合でも守らなければならない。自然法においては万人が平等。円の求積を試み、アルキメデスに先だって去尽法を創案。
トラシュマコス（カルケドンの 不明）
ソクラテスと同世代人。法律と力を同一視。強者の権利を主張。「正義とは強者の利益に他ならない」。
カリクレス
ゴルギアスの弟子。強者の権利を主張。自然法は強者の法…弱者よりも多くの分け前をとる。個人主義・自然主義的。
クリティアス（B.C.480c-B.C.403c）
アテナイ。兼政治家・作家。名門貴族の出。彼の姉妹にプラトンの母がいる。４００人衆の没落後に寡頭政府の領袖となり、407年に民主派の復活とともにテッサリアに流謫。404年、大赦で帰還。３０人衆の一人として流血と独裁の政治を行う。403、トラスブロスとの戦いでカルミデスらとともに殺害される。ゴルギアスの弟子。ソクラテスにも学ぶ。詩や散文を多作。『制度について』。伝エウリピデス作の４戯曲。『シジュポス（断片）』…神信仰の起源を合理主義的に説明。道徳の否定のみならず宗教をも否定。強者の権力を主張。世界観を進化史的に説明…原始の状態→法の制定。
アルキダマス（B.C.４世紀）
兼修辞学者。アイオリスのエラエア出身。ゴルギアスに学び、アテナイでその学校を継ぐ（432-411）。広い知識と即興的能力に秀でていた。派手な文体と詩語。キケロはその文体に感嘆。国家的拘束の無意味・万人の平等・奴隷の平等権を主張。
アノニュムス・イアムブリキ
どのような力であっても法律と正義によって維持される。
リュコプロン
法律は当事者の双方に対して正しいことを保証するもの。貴族の尊厳は単なる言葉に基づく。
エウチュデモス
ディオニュソドロス